受験勉強しているときから、再就職をするぞ、と決めていた。だからこそもう大学進学を心配しなくていい付属校に入れたのだ。「ほんとを言うと、このまま家にいたら、ふたりともドラマに出てきたFさんにしてしまいそうだったんです。家から帰った息子のカバンあけて見ちゃいそうな自分がこわかったのね」ふたりは母が仕事をするのを喜んでいるらしい。夕方いなくなると、きっと好き勝手して遊んでいるだろうと笑ったが、ほっとしているようすだった。この感覚はひじょうにわかる。中学受験は親と子の二人三脚で、ともすると親リードで進められるので、受験が終わったあとも親への過度の依存心がぬけられないまま思春期をむかえがちである。じっさいそういう雰囲気の親子は多かった。このひとがとりあえず子離れしようとしたのは正しいと思う。もっとも再就職先でしっくりいっていない。なにしろ塾否定論者なのだ。同僚の男性講師がすぐ生徒に手をあげることにもたえがたい。今は低学年を教えているが、こんなに早くから塾通いをすべきでないとつい疑問がもたげてしまう。しばらく塾講師としての悩みはつづきそうである。
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